昨日,dpiさんほかとの「比較法の意義」に行ってきました。
事前に思っていたより共通するところが多いな,というのが一番の感想。それと,民法は大変だねぇ,と。民法に行かなくてよかった。
当日配布した僕のレジュメ(理想であって,自分がこれができてるかというとアヤシイ)をば:
比較法・歴史分析の意義 ――US法学(?) + 経済学の発想――
1. 法をめぐる規範的主張についての2つの(極端な)立場
consequentialist -> 法ルールのもたらす影響からあるべき法を探究
(どの基準を使うか(e.g., 効率性,公平,and so on)はいろいろあり得る)
deontologist -> 特定の公準からあるべき法を導く
2. consequentialistから見た比較法・歴史分析
探究の前提として,法ルールがどのような影響を持つかを予測する必要あり→どうするか?
一つの方法:社会科学理論を使う(経済学,社会学,心理学,and so on)
→問題点:自然科学と異なり,社会科学では,”other things being equal”な実験ができないのが一般的
↓そこで
他の国での経験・過去の歴史→法ルールの影響の仕方についての貴重なデータを提供してくれる
↓すると
①“日本法への示唆”:これらのデータから,日本法についてのcounterfactualを構成した上で,その研究者が採用する基準に従って,「あるべき法」を提言する作業
②それ以前の外国法・歴史の分析作業→法の影響の仕方に関するモデルを帰納法的に導出してくる作業
~この②は,①を伴っていなかったとしても有益だし,オリジナルなモデルであれば”interesting”
3. counterfactual構成時の問題点
例えば,法ルールの影響についてのモデルが次のように書けるとする:
law_effect = dD + b1x1 + b2x2 + b3x3 + e
where D is a dummy variable which is one when the relevant legal rule exists and zero otherwise, x1 through x3 are explanatory variables which denote some socio-economic factors, and e is the error term. What you want to know is the coefficient of D, d.
この場合,少なくとも,以下の点に注意する必要がある:
①そもそもこのモデル自体は正しいのか?
e.g., いずれかのfactorはlinearではないかも; interactionやquadraticが入るかも; etc
→model specificationが誤っていれば,dは当然に正しくない
②必要なexplanatory variables(例えばx3)を落としていないか?
→いわゆるomitted variables biasが発生し,dは正しくなくなってしまう
③Dのendogeneityをallow forしているか?
上記のモデルは,Dがlaw_effectを導く,という因果関係を前提にしているが,実際には,law_effectによってDが決定されている側面があるかもしれない
→この場合,dにendogeneity biasが発生し,dの推定値は正しくなくなってしまう