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~ヘタレ研究者は今日も逝く~

deterrence

先日,ちょっと民法の人と話していて。

民事法のいろんな分野で,損害賠償法の機能は抑止だ,っていう視点から説明した方が簡単にその合理性を説明できる規定がたくさん生まれてきているけれど,何か無理して「抑止」って言葉を使わずに説明するよねー,っていう話になった。

何でそうなのか,っていうのはよく分からないのだけれど,とりあえず思いつく理由は2つくらいか。

その1。「抑止」って言葉が誤解されている。

民法の人が書いているもので,しばしば見かける(ような気がする)のが,「抑止」という言葉を「制裁」という言葉と同じ意味で使っているケース。しかも,そこでの「制裁」が,単にサンクションの設定という機能的な意味を超えて,倫理的・道徳的な非難をこめて使われていることが多い(ような気がする)。

僕と小塚さんが「不法行為法の目的」で書いた(そして,経済分析をする人が共通して念頭に置いている)抑止っていうのは,「社会的に最適な抑止 socially optimal deterrence」だ。その辺が今一つ誤解されているような希ガス

その2。実はその1とある程度繋がっているんだけど,slippery slopeを本能的に忌避している。

上述のように「抑止」を理解していると,実は,損害賠償法全て,つまり,単に不法行為の損害賠償だけではなく,通常の契約違反の損害賠償も,「抑止」目的の法ルールだ,と整理できてしまう(まぁUSのロースクールに行くと,こういう教え方が標準的だと思うけれど)。

そうなってしまうと,今までの議論を全部書き換えなくちゃいけなくなって,それって大変だし,先達を片っ端から否定して回らないといけなくなるので,民法学会で生きていけなくなる,っていうことなんだろうか。

というのが,とりあえず思いつく2つの仮説。

もしかすると,他の理由があるのかもしれないけれども。