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~ヘタレ研究者は今日も逝く~

which okano?

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うだつさんに教えてもらった岡埜栄泉の豆大福のはずだったのだけれど。

違ったのですね。ぐは。

ぐぐってみると,岡埜栄泉の名前を少なくとも一部に持つ和菓子屋さんは30くらいあるらしい。比較的有名らしいのを挙げると:

1. 岡埜栄泉(虎ノ門

2. 上野駅前岡埜栄泉総本舗(上野駅前)

3. 東京岡埜栄泉(上野広小路

うだつさんご指定の岡埜栄泉は,虎ノ門の1.だったのだけれど藤崎に来ていたのは2.だった,という落ち。

商法総則をやったことのある人なら,あぁ,あの話か,と気付くのではないでしょーか。平成17年改正前の商法は,「同一市区町村内で,同じ営業で同じ商号は登記しちゃダメ」「誤認の恐れのある商号は使っちゃダメ」てな感じ(細かいところは忘れた...)の規定がありました。で,この辺は,不競法とほとんど重なるからそんなにいらないぢゃん,という中山せんせの主張とかの影響もあって,平成17年改正後(=現行法)は,不正目的+誤認のおそれのある商号を使っちゃダメよ,という規定になっています(会社法8条=商法12条)。

ヘタレは,見事に誤認してしまったわけです ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ

ありがちなストーリーとしては,こういうのは,本家(虎ノ門?)からののれん分けをして,独立する際に,商号使用の許諾をもらっている,というケースですね。許諾があれば,不正目的なしです。えぇ。例えば合資会社麻布永坂更級総本店 vs 株式会社麻布永坂更級総本店な東京高判S61.4.24判時1208-115。

でも味違うよね,きっと。近くに住んでる人とかじゃないと,「東京」とか「上野駅前」とか付いたくらいだともろ誤認する蓋然性は高いのではないかと。商法・会社法も不競法も,商号権の保護という形で規定を設定しているから,消費者のことはあんまり考えてない。ぐはぁ。(←食い物の恨みで暴走中)

少し落ち着くために味についてをば。

かなり大きくて重たい。僕の前に6個買い込んでいたおばあさんが,「重いねぇ」とびっくりしていたくらい。餅は柔らかめで塩味。こしあんが甘さ控えめに作られていることもあって,(大きさ以外は)上品な作り。出町ふたばと比べての難点を言うならば,

- 餅が軟らかいだけで,出町ふたばのような「コシ」がない

- エンドウ豆の主張が弱く(大振りである割に,豆の量が多くなく,埋没してしまっている),アクセントが足りない

- こしあんとの量的なバランスからして,もうちょっと餅がほすぃぃ

というあたりかな。でもまぁ,全体的にはいいできです。本高砂屋のより好み。

で,心を落ち着けて再考してみる:

まぁ,この場合は,上でリンクを貼った「豆大福散歩」というページにも「お店同士の関係や、どのお店がのれん分けしたお店かよく分かりませんが」と書いてあることからすると,もう法律関係不明というか,東京では「岡埜栄泉」という名前が,「更級そば」「讃岐うどん」並みに普通名詞に近い状態になりつつあるのかもしれません。そうだとすると,「岡埜栄泉という商号はそういうもんだ,っていうことを知らなかった田舎もんのヘタレが悪い」という結論になりそうです。本件の事案の下では。

それでは,事案を変えて:

上に挙げた3店しか存在せず,例えば,3.が本家本元で,1.と2.とがそこからのれん分けし,商号使用許諾を得ていたという場合にしてみる。

この場合に,3.の豆大福を買いたいと思っていた北の国から'07なATが,2.の豆大福を誤認して買ってしまったことに後で気付いた場合,ATは,

- 2.に対して「錯誤による売買契約無効と代金返還請求」(まだ豆大福は食べていないものとする),

- 2.および3.に対して,「誤認しやすい商号の使用を許諾して|許諾を受けて,誤認させしめたことによる不法行為に基づく慰謝料(?)請求」

をすることができるかだろーか?