hopping around

~ヘタレ研究者は今日も逝く~

JEA meeting@Tohoku University

この土日に,日本経済学会2008年度春季大会が川内北キャンパスであったので,もぐりでのぞいてきました。「大会参加料は3000円です。」なんて記載はカレーにするーです。

基本は,「知人の報告を冷やかしに行く」だったけれど(てか,知り合いばっかってどーよ?),某ポスターセッションでは,UofC ECON同窓会(3人も集まった!)にもなってました。みんな久しぶりだねぇ。

学会のお作法という点で,法学が見習った方がいいかなと思ったのは:

- 20分の報告に対して,必ず「討論者」に10分のコメントが割り当てられ,さらにフロア5分の質問時間が割り当てられてること。痛い討論者(もちろん,痛い報告者も)がいないわけではないけれど,基本的にはその報告に近い人を事前に選定しているし,ペーパーを事前に読んでいるので,まともなコメントが出やすい。

- 時間管理が厳格。持ち時間経過の3分(?)前になると,チーンと鐘が鳴らされ,持ち時間が経過すると,チーンチーンチーンと3連で鐘が鳴らされて,「さっさと終われ,ゴルァァァァ!」という形になる。

特に後者は,法学は見習うべきで,例えば,星野御大なんかのしゃべりに対して使うと効果的ぢゃないかと思う次第。とはいえ,松村せんせに聞いたら,この慣習が入ったのはつい最近だとのこと。

報告の中身についてはいろいろあるんだけど,ちょうど,最後にさっきまで聞いてた報告があれ?って思ったので,簡単なコメントを(フロア質問は名前と所属言わなくちゃいけなくて,参加料払ってない身でカミングアウトするのも何だかだったから,沈黙):

それは,「私立高等学校授業料補助(≒教育バウチャー)が高校中退に与えた影響の実証研究」(by 赤林英夫+荒木宏子)というのだけど,報告者も,討論者・フロアからの質問者も,「授業料補助は,生徒の借り入れ制約を緩和するから,中退率を下げる」という前提に立って議論していたけれど,それって逆じゃん?というのが僕の直感的な感想。

実際,このペーパーの分析でも,確かに普通のOLSだと授業料補助によって中退率が下がるという結果が有意に出るものの,fixed effectsを入れると,有意性は一発で消える(し,場合によっては中退率が上がるという結果も出る)。

僕の直感は単純で,USのaffirmative actionと同じ。affirmative actionは,マイノリティな人種に大学の入学なんかで特別なアドバンテージを与えるものだけど,あれはかえって逆効果になる,ってのが最近の研究のトレンド。affirmative actionが適用されると,「自分が本来入学できたであろう学校」よりもランクが上の学校に入学できることになるから,入学した後に授業について行けなくなってドロップアウトするから。

授業料補助でも,同じself-selection biasが出るんぢゃないだろうか。授業料補助があることによって,授業料補助がなければ進学できなかったであろう私立高校に入学する -> しかし,入学した高校での授業のレベルは,その人のそれまでの家計状況によって制約されてきた学習条件(ひゅーまん・きゃぴたる的に考えてもOK)の平均からすると高いので,授業について行けなくなる蓋然性が高まる -> 中退率が上がる。もちろん,借り入れ制約の緩和によって,「経済的状況で高校通学をあきらめざるを得なくなった」という問題については,授業料補助は緩和してくれるから,どちらの効果が上回るかは一概に言えない。けれども,直感的には,高校中退の理由って,経済的理由よりも学校の勉強について行けなくなったから,という理由の方が多いんじゃないかという気がして,それなら,授業料補助によって,中退率は上がるよねぇ?