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~ヘタレ研究者は今日も逝く~

employee representation

今朝の朝刊に,民主党会社法を改正して,従業員代表を監査役にすることを義務化,なんてニュース(リンクは東京新聞)が載っていたけれども。

(どーでもいいことなのかどうかよく分からないけれど,記事中の「雇用者」は,「被用者」の間違いなんぢゃないだろーか,という突っ込みはさておき。マニフェスト本体が間違っているのか,記者が間違えたのか。ちなみに,中日新聞も同じになってる)

何となくドイツの共同決定制度を思い起こさせるものだけれど,普通の会社法学者でこれを日本でやろうという人はあまり見かけないので,いったい誰が入れ知恵したんだろーか?というところが,井戸端会議的には興味深い。

ともあれ,ドイツのまねにしてはちょっと変だし,マニフェストに掲げられている政策目的とその効果との整合性も怪しいところがある:

- 確かにドイツ株式法は,「監査役会」に従業員代表が入るけれども,ドイツ株式法の「監査役会」は,日本の株式会社で言えば取締役会だから,監査役じゃなくて取締役にすることにしないと,正確な「まね」にはならない

- 「経営監視の強化」っていう政策目的が掲げられているけれども,従業員はまさに,「社内」の存在であって,経営陣のいいなりになる危険性の高い(=いわゆる「独立性」がない)存在だから,従業員代表に「経営監視の強化」機能を期待するのはお門違い

まぁ,そもそも,ドイツ株式法の従業員代表は,経営監視の強化の目的で入ったのではなくて,労働組合の政治力が強いドイツにおいて,労働組合の利益を代表するために入ったものなので,日本でも,従業員代表を送り込むとしたら,そういう機能しか期待できないんじゃないかなぁ。

もっとも,従業員代表を入れたとしても,監査役としてじゃ,そういう機能さえ期待できないかもしれないよね。従業員の利益を考慮しなくとも,それが善管注意義務違反を構成することになるわけではない以上(普通の考え方を前提とするならば),従業員代表監査役が何と騒ごうと,取締役会での議決権もないし差止請求もできないのだから,経営陣には痛くもかゆくもない。それに,委員会設置会社だとどうなるのかもよく分からない。監査委員会に従業員代表を入れるにしても,監査委員会は,雇用の維持みたいな経営方針を議論する場ではないから,労働組合の利益確保には役立たない。

そう考えると,本音は,マニフェストに掲げられている政策目的とは全然違っていて,民主党の支持母体の一つである労働組合に対して,支援の見返りをあげるよ,というポーズなんだ,っていうことになる。

素直ぢゃないなぁ,と思うけれども,素直にならずにレトリック(?)を駆使して一般人をだますのが政治家の正しいあり方なんだから,これはこれで仕方ないか。