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~ヘタレ研究者は今日も逝く~

MPP

昨日,ある学部生さんから進路相談を受けたので。

相談内容は,「学部を卒業したら,アメリカの大学院,特に公共政策大学院に進学しようかと考えてるんですが,どーでしょうか?」

アメリカの大学院に進学するために何が必要か,については以前このブログで書いたことがあるような記憶があるので,もう一つ,アメリカの公共政策大学院を出てMPPをとることが役に立ちそうか,っていうポイントに僕がどう答えたかというと。

僕がUofCで見てきたHarrisを一般化するならば,アメリカの公共政策大学院で教えることは,ほとんど経済学だ(それ以外の授業もあるけれど,メインは経済学)。何でそうなるかというと,公共政策大学院は,「何が社会にとって『良い』政策か」を考えるためのトレーニングをする場であり,何が社会にとって「良い」政策かを考えるためには,経済学(+計量経済学,特にprogram evaluation)を使ってさまざまな政策が社会に与える影響を予測しつつ評価することが一番の近道だからだ。

で,公共政策大学院ってそーいうところだろー,という頭で日本に帰国してきた後,弊社の公共政策大学院を知ってびっくり。いやだって,経済学はほんの少ししか教えず,カリキュラムのメインは,仙台市役所や宮城県庁の協力を得て行う「公共政策ワークショップ」だ。そこでは,経済学を使った政策構築ではなく,利害関係者へのヒアリング等を通じて利害調整を図って政策を構築していくすべが学ばれる。で,Chicagoから帰国した直後は,「これのどこが公共政策だよー,日本的public management(行政学)じゃん」とプゲラしていた。

実際,初期の頃の弊社の公共政策大学院はあまり志望者が集まらなかったんだけれど,ところがどっこい。最近は,ワークショップで学んだことが実際の官庁や地方公共団体での政策形成に役立っているのか,志望者が多い人気校になりつつある。

ということから推測すると,日本の官庁や地方公共団体での政策決定の場では,いかに利害関係者間の調整を図るかが大事であって,アメリカみたいに,「これが社会によい政策だ!」という意見をロジックをもって戦わせることは重視されてない,ってことなのかもしれない。

もしそうだとすると,アメリカの公共政策大学院を出て,MPPの資格を得ても,日本での就職においてはあまり評価されないかもしれないよ(もちろん,そのままアメリカなど外国で就職しちゃうなら別),というのが僕の回答。