今朝の大ニュースはなんと言ってもこれ
地震予知失敗で禁錮6年 伊の学者ら7人実刑判決 (日経)
でしょ。
こういうケースって,基本的には,国賠法1条2項で公務員個人の免責(故意重過失除く)が定められているのと同じなんであって,基本的には免責すべきじゃないだろーかと思うんだけれども(今回も過失犯ということだし)。
何で国賠法で公務員個人が免責されているかっていうと:
①一般に行政組織が行う行為っていうのは,多くの人に与える行為であることにより,不適切な行為を実施した場合の損害が莫大になる一方で,その意思決定を行っている個人は,企業の経営者などとは違って低い報酬しかもらっておらず(仮に責任保険をかけたら給料が吹っ飛んでしまうだろう),その巨大なリスクに見合うほどリスクの受容力がなく,リスク回避的であるから,この個人にリスク負担をさせると,過度にリスク回避的な意思決定がなされてしまう。それよりは,リスク中立的な意思決定をさせた上で,そこで起きた負担は,国民全体というよりリスク中立的な主体によって負担させた方が効率的
②じゃあ公務員個人にリスク負担させないことによって抑止効果が十分に発揮されずモラルハザードが発生してしまうんじゃないかというと,キャリアシステムの設計や評判効果によって,ある程度担保されるから(もちろんそれがどれくらいきちんと機能しているかは議論の余地があるけれど,建前としては),公務員の意思決定は,さほど非効率にはならない
っていう形で考えられる。
で,このロジックは,学者が地震予知(それ以外の社会科学での予知もいろいろあるけれど。日銀の意思決定とか)にもあてはまる:
①地震予知の外れのもたらす損害は大きいけれど,学者個人はリスク回避的だから,学舎にリスクを負担させると,過度にリスク回避的な意思決定を行うインセンティヴが発生する(たとえば,地震が起きる確率をわざと多めに予測する。で,もし多めに予測したところで地震が起きなかった場合に,無駄に終わった予防措置について損害賠償責任を負うなら,そもそも予測を全くしない。)
②アホな予知をした学者は,その後の学会でのレピュテーションが落ちる(正常な学会なら――でも公務員よりはマシな気もする)から,アホな予知をあえてしようというインセンティヴはあまりない
まぁ,もし②のインセンティヴが弱いのであれば,他の方法で抑止効果を補強して最適なレベルに持っていく,ということはあり得るけれど,刑罰ってのは強すぎるインセンティヴじゃね?と思うわけです。