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~ヘタレ研究者は今日も逝く~

10 percent per 10 days

かなり面白いペーパーを見つけて,1時間くらい熱中して読んでました。何のペーパーかというと,高利貸しの効率性についてのペーパー。去年は日本でも貸金業規制法の改正とかが話題になっていたので,ひょっとすると多少はpolicy implicationもあるかもしれませぬ。

高利貸しといっても,ただの消費者金融ではなくて,このペーパーが問題にしているのは,まさにトイチ級の超高利貸しで,年率換算400%くらい行っちゃうようなもの。日本なら当然違法ですが,USだと合法な州もあるらしい(例えばCA。もちろん,違法な州も多い)。こういった高利貸しが,各コミュニティに存在するか否かを説明変数とし,様々な社会的厚生の指標を被説明変数として検証してみましたよ,というペーパーです。natural experimentとして,当該地域に自然災害が発生したか否かのdummyを採用してます(<- 自然災害は偶発的に発生するものである一方で,高利貸しによるファイナンスへのニーズを高める)。

もちろん,そんなことを言っても,当然,unobserved varirableによるendogeneityが深刻で,そのままregressした結果を信じるアホはいません。そこで,何をやったかというと,そこのところがかなりの労作です。工夫は3つで:

- diff-in-diff-in-diffs [triple differences]

- propensity score matching

- IV

です。diff-in-diff-in-diffsまでは変数作るの楽ですが(<- dummyとそのinteractionを放り込むだけ),matchingとIVは,ペーパー読んでると,「うぉ,これ作るの大変だなぁ」と感心します。例えば,IVについては,こういった高利貸しは,道路網が集まる地点には存在しやすいが,そうでない地点には存在しにくい,ということを利用して,「当該コミュニティの道路網の集積度」みたいなものをinstrumentにして,高利貸しの存否のdummyをinstrumentalizeしてます。...データセット作るので死ぬよ... そういえば,Hoxbyの「川の配置と橋の数」をinstrumentにするのも大変そうだ。

で,結果はどうなっているかというと,

高利貸しの存在するコミュニティの方が,自然災害によるダメージが少ないし,自然災害からの回復が早い

という結果がかなりrobustに出てます。すげぇ。火事場泥棒って,実は世のため人のためになっているんですねぇ。

で,仮にこのペーパーがendogeneityにうまく対処できているということを前提にすると,発展すべきは次の2つ(前者はペーパー自体で言及されている)かな,という気がします:

1. 自然災害のような場合だけじゃなくて,平時においても高利貸しは望ましいのか?

2. 高利貸しによるコストがsocial welfareの計算に入ってないのではないか?

このうち,1.はまだオープン。2.については,明示的に言及されてないけれど,被説明変数に採用されているものの一部が,こういったコストを折り込んだ指標になっていて,そこでもrobustな結果が出ているから,まぁクリアされているのかな,という気がします。