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~ヘタレ研究者は今日も逝く~

rules and standards (again)

天井の落下防止策を再検討へ (NHK)

ことし3月の巨大地震で、ホールなど広い空間の天井の落下が相次いだことから、国土交通省は、被害の情報を分析して落下防止策を再検討することを決めました。

ことし3月の巨大地震では、栃木県にある自動車メーカーの研究所で、天井が落下して男性が死亡したほか、茨城空港のターミナルビルや川崎市のコンサートホールで天井の一部が落下するなど各地で被害が相次ぎました。ホールなどの広い空間の天井の落下防止策は、平成13年の芸予地震をきっかけに国が落下を防ぐための構造を定めた指針を作りました。しかし、平成17年には、震度5強地震仙台市の屋内プールで天井が落下して26人がけがをしたほか、今回の巨大地震でも各地で被害が起きたことから、国土交通省は、これまでの指針では不十分だったとみています。このため来月上旬に有識者による検討会を設置して、公共施設に加え民間の施設にも被害情報の提供を求め、揺れと被害の関係を詳しく調べることにしています。検討会は、来年3月をめどに報告書にまとめ、国土交通省は、これを基に指針の見直しも含めて天井の落下防止策を再検討する方針です。

実際,僕が当時いた成田空港でも,国内線ゲートに向かう通路で一部天井が落下していたんだけれども。

で,建築基準法上は,構造部分については厳格な耐震基準が設けられているけれども,天井のような非構造部分については厳格な耐震基準がなく,割と自由に設計されているがために,たくさんの天井落下事故が発生した,というお話し。

で,そういった天井落下事故が発生したときに,当該建築物の所有者(あるいは管理者)が,「天井については厳格な耐震基準がなく,建築基準法をクリアしているから,自分は責任を負わない。緩い耐震基準を作った国に責任がある」って主張できるかっていうと,それは無理だろうなぁ。

つまり,耐震基準っていうのは,"standard"じゃなくて"rule"であって,当該政策判断に関する事前の情報収集がコストベネフィットに見合うところの最低限を定めているに過ぎない。

その一方で,今までに天井落下事故が何件も発生しているという情報を知っているのならば,個別の建築物ごとに天井の補強工事のコストベネフィットを考えるのは,個別の建築物ごとの細かい情報を事後的に入手できる当事者(あるいは裁判所)に任せるのがいいはずで,耐震基準をクリアしているからといって,当該建築物の所有者(・管理者)が責任を免れる,っていうことにはならないはず(まぁ,それにそもそも,所有者は無過失責任だけれども(民法717条))。