本日の日経朝刊に出ていた,
復興工事丸ごと委託、市町村の業務代替 宮城で来月(日経)
という話,かなり前から業界が働きかけていて,4月の復興相記者会見の段階で,既にやる方針になっていたらしい。
construction managementっていうのは,記事のタイトル通り「開発工事の丸投げ」というもののようだけれども,いろいろなバリエーションがあるらしい(たとえば国交省のガイドライン・CM協会の解説)。
こういったシステムの話を聞いて,まず気になるのは,コストの増減に関するリスク配分。当初予定された価格より低いコストで完成させることができた場合に,その利益は,発注者と受託者とのどちらに帰属するのか。同じことだけど,逆に,当初予定された価格より高いコストになってしまった場合に,その損失は発注者と受託者のどちらに帰属するのか。
直感的には,リスク負担を受託者側におけば,その分,コストを低く抑えようと努力するインセンティヴが発生する(ただし,リスク回避的であれば,リスク負担する分,価格は上乗せされる)のに対し,発注者側におけば,受託者にはコストを低く抑えようとするインセンティヴはあまり働かない(レピュテーション効果くらい)けれども,リスク負担がない分,価格は低くなるかもしれない。
この辺の分析は既に結構なされているようで,前者を「アットリスク型CM」,後者を「ピュアCM」と呼ぶらしい。
ただ,コストの増減に関するリスク配分の他に,もう一つ大事なリスクがありそうだ。それは,委託する業務の範囲が拡大すればするほど,その業務の具体的な内容を,入札・契約段階で特定することが難しくなってしまう,というポイントだ。つまり,CMという形でいたく範囲を拡大すると,その分,契約で特定すべき債務内容についてはunverifiable(ひょっとするとunobservable?)な部分が増えてしまい,imcompleteな度合いが増大してしまう。
imcompleteさが増せばますほど,それに伴って,受託者側のモラル・ハザードの余地が増えてしまうことになる。この辺は,よく知られているように,サービス業務なんかを地方公共団体なんかが入札で発注すると,入札仕様にうまく書いていなかったところで,節約に励みすぎた業者が低価格で落札してしまい,結果的にサービスの質が「想定外」に低下してしまう問題と,よく似た問題状況だ。
こういったモラル・ハザードを緩和するための方策にはいくつかあるけれど,一つは,unverifiableな情報が,verifiableになるまで待ってから報酬を支給する,といった形にすれば,ある程度,imcompletenessは解消されてくる。この方法が実際に使われているのが,CEOやファンドマネージャーの報酬体系で見られる,報酬繰り延べ条項とかクローバック条項だ。
CMのケースだと,委託された工事が竣工してから,利用者からの評価なんかを待ってから,報酬を支払う(あるいは返還させる)という形になるわけだけれど,
- そういう問題って,CMの場面では議論されてたんだろーか?
- 仮にこういう対処が考えられるとして,それって実現可能かなぁ(法的に,あるいは,受託者の資力的に難しいかも)
という点が,ちょっと気にならないでもない。