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~ヘタレ研究者は今日も逝く~

price setting under VAT

月曜日の日経の経済教室に出ていた,森信せんせのドイツのVATに関する紹介はなかなか示唆的で。

その紹介のポイントはおそらく2つあって,

- 小売業者にとって,VATは売り上げマージンの計算の一部

- インボイス方式はいい

で,後者の点はさておき,日本で「なぜ?」と思ったのは,前者。つまり,VATは,小売業者にとっては,マージンの一部を持って行かれるものなので,別にすべての商品に同じVATの%(消費税が上がった後なら8%)をふかして売値を決める必要はなく,売れ行きとか商品の競争力とかを考えながら,お店全体としてVATを持って行かれた後でも,従前と同じ利益が上がるように売値を設定すればいいわけだ。だから,別に,増税のタイミングと同時に売値を変える必要もないし,全商品について一律に売値を変える必要もない。

で,日本で何でこれができないかなーというと,たぶんそういうことをすると,「便乗値上げだ!」っていう批判が来るからじゃなかろーか。しかし,この批判は実はよくわからない。

たとえば,あるお店が,「便乗値上げ」をしたとする。この場合に,もし,同じ商品を扱っている別のお店とカルテルを組んで一緒に便乗値上げをしたら,確かに問題だ(まぁ,今回の消費税増税ではそれを一定の条件でやっていい,とはなっているけれど)。でも,もし,別のお店が「便乗値上げ」をしなかったならば,そちらのお店に顧客は流れるだろう。そうすると,「便乗値上げ」をするかどうかは,顧客が流れることの売り上げ減少効果と,値上げによるマージン増加効果とを計算しながら決めることになる。それでもおっけーといって「便乗値上げ」をするのであれば,値上げしなかったお店の方で買いたい顧客はそちらで買えるのだから,別に特に(大きな※)問題はない。

そうすると,日本では,何でそんなに「便乗値上げ」ってのがたたかれるんだろう?っていうのが不思議になってくる。一つの仮説は,日本だと,消費税ってなぜかとにかく人気がないので(何せ社会党共産党が消費税に反対する不思議なお国柄),消費税で小売価格が上昇した,という外観をできるだけ抑えたい,という政治家さんたちが,「便乗値上げはさせません」ってパフォーマンスをしたいとかんがえるからなのかもしれない。いや,そんなことをしなくとも,ただ単に消費者が,「便乗値上げ」をしているところに買いに行かなければいいだけの話じゃないかとは思うんだけれども。

※「大きな」っていうのは,たとえば,「近くのスーパーにしか行けないんだけど,そこが値上げした」ってケースもあるから。しかしそれは,市場画定の問題なので,別の問題になる。ここでは,とりあえず市場画定はきちんとやっていて,その市場の中で,というお話。