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~ヘタレ研究者は今日も逝く~

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判時の最新号をぱらぱら見ていたら,楽しそうな裁判例が:

    東京地判H17.10.4判時1944-113

何がって,「すーぱーびゅー踊り子のグリーン席に乗ったら,座席が回転しなかったたので,伊豆急下田から横浜まで進行方向逆向きに座らせられることになったり,カーテンが付いていなかったり(←すぅぱぁびゅぅなので)したため,不快感・船酔いに悩まされたので,慰謝料請求」。

これで訴訟起こす原告すごす,と思ったら本人訴訟。弁護士費用払ったら,仮に勝っても赤字。まぁ,仮に単なる債務不履行だけだったら,「グリーン席特急料金-指定席(or自由席)特急料金」の差額しかとれないはずなので,慰謝料請求付けてますが。

判旨は2段階構成になっていて,

a) グリーン席契約(という風に名前を付けておきます。仮に)の契約内容は何か

b) 債務不履行があったか

の2つをチェック。で,勝負は,a)のところでほぼ付いちゃってます。

つまり,JRの営業規則によれば,グリーン車の定義が,「特別な設備」を持った車両,となっていて,その具体的内容については定義されていない。であれば,普通の(=新幹線とかの)グリーン車のように,座席感覚が広くてリクライニングがゆったりしていて,という座り心地重視のもの以外にも,すぅぱぁびゅうのやうに,「景色がすんぱらしい」というのもグリーン車の定義にちゃんと当てはまる。そうであれば,すぅぱぁびゅうのように,座り心地を犠牲にして景色重視の車両もグリーン車ぢゃい,というわけです。

評価が分かれるとしたら,このa)の部分をどう考えるか,ですね。JR・乗客間の契約書面を構成する営業規則には,こういう定義しかないけれども,実際には,JRが走らせている「グリーン車」のほとんど(何%か知らないが)は,座り心地重視系なわけです。そういう事実があるのだったら,「特別な設備」というのに対して,座り心地重視系の座席を期待して契約に入るということは十分にあり得るわけで(鉄な人はすぅぱぁびゅうは名前からして別だと期待すべきだ,と言うかも...),そういった契約外の事実というか慣行を契約内容に取り込んで,契約内容を読み替えてしまう,という行き方も十分あり得るような気もする。

この事件,控訴されているけれど,本人訴訟のままでは,流れを変えるのは難しいでしょうねぇ。訴額が小さいので,付いてくれる弁護士もあまりいそうにないですが。

まあでも,判決とは関係ないけれど,進行方向後ろ向きって,そんなに不快なんだろーか,という気がしないでもない。外国行ったら,長距離列車でも座席回転しないものなんていくらでもあるし,近場では,秋田新幹線こまちは,大曲-秋田間は,他の区間と進行方向逆向きになるけど,誰もいちいち座席を回転しないらしい。