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~ヘタレ研究者は今日も逝く~

civil sanction and ciriminal sanction

民事のサンクション(不法行為)と刑事のサンクションの使い分けについては,こう書いたことがある:

刑法において故意犯処罰の原則が採用されていることもこのような観点から説明することができる。すなわち,過失犯については,不法行為法によって実現される損害の内部化によって,抑止のために十分なインセンティヴが既に設定されているから,これを刑法で重ねて処罰する必要性はない。これに対し,故意犯の場合には,例えば殺人によって追加的な心理的な満足を得ているといった特殊な状況が存在するので,これについて適切な抑止を実現するためには,不法行為法による損害の内部化では足りず,刑法の処罰による追加的な抑止効果が要求されるのである。

(森田=小塚「不法行為法の目的」NBL874号,注37)

刑法の世界における業務上過失致死傷の運用見てると,この辺の配慮が欠けているなぁ,と思うことがよくある。まぁ,自動車事故に関しては,業務上過失致死傷を適用することにそんなに問題はないと思うんだけど,それ以外はちょっと,ねぇ。

端から見ていて,それって全体として過剰なサンクションであって,余分な萎縮効果を発生させる蓋然性が高いんじゃないだろうか,って思わせる事例がしばしばある。そうすると,その業界への参入が減衰して,結果的にサービスの受益者である僕たち国民にマイナスの影響だって出かねない。

最近だと,航空管制官とか。ちょっと前だと,産婦人科医とか。

とはいえ,業務上過失致死傷という規定の文言上――構成要件上――は,限定がかかっていないわけであって,そうだとすると,起訴して有罪にできるのであれば,現在の検察官のキャリアシステム上は,そうするインセンティヴがあることは致し方がない。

とすると問題点は,刑事法規を作るときに,それぞれのアクターのインセンティヴがあまり考慮されていないかもしれない点なんだろうか?