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~ヘタレ研究者は今日も逝く~

lex rei sitae

射倖契約のやつ,NBLから返事がないので尋ねてみたら,忘れ去られていたらしい(笑)。掲載はしてくれるそうです。掲載号未定でつが。まぁ,ドラフト回覧に出した人たち&東北民法研究会参加者からは,賛同はともかく「面白い」と言ってもらえたので,仮に蹴られたら,金法あたりに投稿しようかとは考えてました。

それはともかく,本日のお題は,土曜日に報告した「新しい国際私法と信託」に関して。民商3月号掲載予定です。金曜日のお昼くらいから書き始めて,土曜5時の研究会直前にぎりぎり8割完成。

民商の特集テーマは「平成国際私法の発展と展望」だけれど,少なくとも信託に関しては,ほとんど議論ないので,「発展」なんてないっちゅーの。実質法研究者というシロウトによる畢竟独自の見解で突っ走りまくって,とりあえず国際私法の専門家から,そんなに変なことは言ってない,というお墨付きをもらえました。

が,そこで前から気になっていたのが,お題の物権準拠法(←国際私法の世界は,なぜかみんな気取ってラテン語使う。どーにかしてくれ)。

物権準拠法ってのは,他の様々な単位法律関係に比べると,ややちょっと特殊じゃないか,という気がする。どういうことかというと,単位法律関係の性質決定というのは,渉外的法律関係がバンと出現してきた際に,それを塗り絵のように色分けしていく作業なわけだけれど,物件所在地の公序(報告の中では,「公序」の内容をもうちょっと具体的・理論的に説明したけれど)と強い関わり合いを持つlex rei sitaeは,一定の分野については問答無用で介入してくる法規範とならざるを得ないことがある。

それを,どういう風に説明するか,ということがよく分からない。おそらく説明の仕方は3通りあって:

(a) ある分野については,物権と性質決定され,lex rei sitaeに連結される

(b) ある分野については,××と性質決定されるけれども,lex rei sitaeが属地的強行法規として介入してくる

(c) ある分野については,××と性質決定されるけれども,lex rei sitaeとの間の適応Anpassung問題(ドイツ語でごめん)として処理される

があるかと。

僕は,(a)をベースとした上で(b)の可能性もあるのじゃないか,と指摘したら,西谷さんから,いやそれは(c)じゃないか,という指摘が。

具体的な結論という点では,(a)-(c)どれも大きな違いはないように見えるけれど,(a)と(b)(c)の間は少し違う。(a)なら,当該分野については常にlex rei sitaeで行くけれども,(b)(c)はとりあえずは××準拠法で行くのであって,それがlex rei sitaeと矛盾していなければ特に問題なし,ということになる。で,どっちかというと,僕自身は,物権に関するルールというのは,ある程度ひとまとまりに適用した方がいいのであって,(a)で行った方がいいのぢゃないかな,という頭が前からあった。けれども,国際私法の人は,そうではないらしい。

次に,(b)(c)でどっちかというと,どちらで行くかによって実質的な違いはないような気がする。どっちで行くにしろ,累積的適用(配分的適用じゃないよね)の結果になることに違いはないのでは。そうすると,説明の仕方の違いであって,西谷さんによれば「国際会社法のときは強行法規の連結が乱発されすぎた」(←ごめんなさい,僕も加担してました...でも,多分一番の悪玉は,早川さん@立教ぢゃないかと :-)とのことで,一般的には(c)を使え,ということらしい。確かに,(b)は,伝統的にはすごく限定的な使い方をされてはきたのですが。

(a)と(b)(c)の間には,もう一つの違いがあって,(a)は国際私法(準拠法)レベルで話をしているのに対し,(b)(c)は実質法を見てのお話だ,という点が違う。全てを国際私法で説明する(a)はそれなりにすっきりしているようにも思うんだけれど,ダメなのかなー。

# 以下余談1

にしても,有斐閣六法の「法の適用に関する通則法(旧法例←Chicago行ってる間に名前変わってた...)」の位置は相変わらずひどい。刑法の前だもんね。三省堂だとこれが民法の後・商法の前に来て多少まともになる。手許にないけれど,記憶では確か岩波が公法の後・民法の前に入っていて,これが正当な扱いだと思うのだけれど。

まぁ,六法の並びは異論がいろいろあって,金融商品取引法(←Chicagoに行ってる間に名前変わってた...)もよく話題になる。会社法やってる人間からすれば,当然,金取法は,投資家保護ルールとして会社法と組み合わさって働くから,会社法の後ろに入れて欲しいわけですが(三省堂ではそうなってる),有斐閣では独禁法なんかの後ろ(!)に入ります。こういう並びを作る人の頭は,「金取法は,証券会社規制法だから他の業法と同じ」ってなっているんですねぇ。非常に行政法よりだ。有斐閣のこの並びを決めたのは,誰が最初なんだろう?

# 余談2

この日の報告で触れた早川先生の1990年論文は非常にヤバイです。一般論で「信託準拠法で相続法秩序ぶっとばしておっけー」と書かれています。「そりゃないだろ」と思っていたら,水野先生が「ソンナノ,ユルシマセン」。おーっ,家庭内不和の危機!(笑) 早川先生必死で弁解して曰く,「あれー,僕そんなこと書いてたのかー,昔のことだから覚えてないよ... 多分,初めて信託の勉強を始めて,おいしいご飯を食べさせてもらって調子に乗ってプロ信託で書いちゃったんぢゃないかと... そのうち改説する論文書きます」。ちょwwwwwwwww