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~ヘタレ研究者は今日も逝く~

donations and human capital

大学が独立行政法人化して以来,どこの大学も,卒業生とかに寄付を募ることをがんばっているけれども,そういった慣習が普及してるUSに比べて,日本はどうも低調。

それってなぜよ?ってことだけど,基本的には,日本が学歴の効かない平等社会で,human capitalへの投資のリターンが少ないからなんだよね。

USの場合,human capitalへの投資のリターンが大きいから,いい学校に入ってちゃんと勉強して卒業すれば,そうしなかった場合と比べると,数段高い職業に就くことができて,それによって数段高い収入を得られる。逆に言えば,高い収入を得られるのは,学校でいい教育を受けてhuman capitalを高めたことのおかげだから,その高い収入の一部を,寄付という形で学校へとフィードバックしようと思うわけ。もちろんその他にも,自分が学生だったときに,そういった寄付に助けられていたわけだから,そこへのフィードバックという意味合いもある。

でも,日本の場合は,格差のない平等社会であって,いい学校を卒業したり,修士号をとるとかいった投資をしても,だからといって大きなリターンが発生する訳じゃない。そうだとすると,学校に対して恩返しをしようという発想にもなりにくい。

この前,中国に行ったときにも,そういった日本の人的資本への投資の意識の希薄さというのが身にしみて。たとえば,清華大学が,外国人向けLLMコースを開くと,その学生のほとんどはアメリカ人と韓国人で,日本人は全然来ない,と。このLLMでは別に中国の法曹資格を得られるわけではないけれど,そこで学んでおけば,将来の日中関係を考えれば非常に大きな役に立つにもかかわらず。その辺はやはり,日本が平等社会で,人的資本へ投資することの無意味さってのを,みんな分かっていることから来ているんぢゃないのかなぁ,と思うわけです。「今の若者は...」って嘆くことより,そういう風になる社会的基盤の方に目を向けなきゃねぇ。