hopping around

~ヘタレ研究者は今日も逝く~

role of legal scholars

先日,「研究者としてどうやって生きてくか」という話を同僚としたので。

会社法(←お前は会社法かよ,って突っ込まれるかもしれないけれど,まあとりあえず一応。本籍あるし)の世界の特徴の一つは,企業法務っていうことで弁護士さんがかなりペーパーを書いている点だ(特にここ数年は,事務所によってはペーパーを公表することが業績にカウントされているところもあるので)。なので,研究者としての存在意義を示すためには,「弁護士さんとは違うペーパーを書ける」ということを売りにしなければいけない。

この点,一昔前までは,伝統的な実定法学は,比較法をしてなんぼ,という世界だったのだけれど,渉外系の法律事務所は,海外の事務所とネットワークがあるから,世界各国の法制度のデータについてそちらのネットワークから簡単に情報を入手できる。しかも,基本的に個人プレーな研究者(秘書もいない)と違って,パラリーガルとか補助者がたくさんいる。そうすると,単純に「データとしての比較法」をやっているだけでは,スピード・量の2つの点で研究者のアドバンテージは薄れてきてしまっている。

じゃあ,どうやって違いを打ち出していけばいいのか。

違いの打ち出し方は,①比較法をやりつつ違いを打ち出す,あるいは,②比較法以外の方向性に進む,のどちらかだろう。

①をやる場合,2つの手がある。

その1。スピードと量で勝てないなら,質で勝負。先ほど,「データとしての比較法」と書いたけれど,本当に良質の比較法(前にこのブログで書いたことある)は,比較対象となった国の社会構造・歴史・文化などにまで深く立ち入って分析を行う(一つの究極の理想像が,木庭センセのローマ法と言えるかも)。テクストもみっちり読む。こういった作業は,弁護士さんはやってない(し,たぶんやる暇もない)ので,研究者にアドバンテージがある。

その2。スピードでも量でも質でも勝てなくても,中立性で勝てるかも。弁護士さんは,どうしてもクライアントの意向を無視できない。その法律事務所がどのようなクライアントを持っているかによって,弁護士さんの書くものには制約が発生する(←商事法務見てるとそれが感じられること結構あるよ)。その点,研究者は基本的にはそういった制約がなく,「中立的」だ。

他方で②。こちらが現在までの僕が歩んでいる道で,「弁護士には書けないような視点からペーパーを書く」が基本。そして,「あぁ,こんな考え方もあるのか」と面白さを感じてもらう。そのために,経済学とか社会学とか心理学とか統計とかやっているわけです。まぁそれが成功しているかどうかは,読者のみぞ知る。

幸いというか,僕は,そもそも①の路線があまり好みではなく,②に適性がある(頭の構造は理系だし)ので,この路線を選んできている。

全国の他の(会社法)研究者さんたちは,自分の立ち位置をどう考えているんだろうねぇ。ちょっと知りたい気もする。