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~ヘタレ研究者は今日も逝く~

Aceh

最近読んで面白かったペーパーその1:

Benjamin Olken

The Simple Economics of Extortion: Evidence from Trucking in Aceh

インドネシアアチェ州での汚職の実証研究。データセットがとにかくすげぇです。

分離独立運動で有名な(有名だった)アチェを通る2本の幹線道路沿いに,警察や国軍のチェックポイントがたくさんある。違法な過重積載のトラックがほとんどなので,トラックは,チェックポイントを通過する毎に賄賂を払って見逃してもらう。このときに,いくら払っているか?というののデータなわけです。どうやって金額をチェックしているかというと,トラックに地元民のバイトを記録係として一緒に乗ってもらって,その人に記録しておいてもらう。さすがにアメリカ人が乗っていたら怪しまれるよね :-)

さらに,すごくきれいなnatural experimentがあって:

- 国連の介入によって内戦状態が解消に向かい,アチェ州では段階的に国軍・警察が撤退し,それによってチェックポイントの数が少なくなる

もうなんてステキなexogenous shock,という感じです。さらにうまいことに,2本の幹線道路は,分離独立運動が盛んだったアチェ州だけでなく,北スマトラ州も経由していて,北スマトラ州ではチェックポイントの数は不変。このため,

- アチェ -> treatment group

- 北スマトラ -> control group

という比較ができる。

で,結果はというと,面白いくらいにIOとbargaining theoryの予測通りの価格変化が見られるのですね。すばらしい。なんかJPE向きのペーパーだなぁ,と読みながら思っていたら,別バージョンがJPEの4月号に載るみたいです。

汚職の実証研究といえば,他にあるのは多分McMilan-Zoid(<-Levittの授業で読まされた)くらいしか無いような気がするくらい珍しい。McMilan-Zoidも,統計処理をしているわけではなく,一つの事件についてのケーススタディなので,きちんとした実証ペーパーはこれが初めてなのかもしれない。確かに,普通はデータがとれないもんねぇ...

これを商事法務研究会賞に推薦したらダメかな... 「日本の」って制限付いてないし。あ,でも,「法学研究者」「法律実務家」ってところと「企業法務」ってところがヤバイかな。しかし,一応法律に関係してるよね。企業法務に関係してるよね。うむ。ぐはははははははははは。