hopping around

~ヘタレ研究者は今日も逝く~

transfer of business

巷で問題になっている「処分逃れの事業譲渡」ですが。

「法律上は可能になっちゃうので,行政指導する」と言うわけですが,なんとゆーか,金融規制の経験がある人間からすると,金融以外の分野って緩すぎない?って感じもあるわけです。

例えば,ヘタレが以前関わったことのある信託業法なんかだと,5条2項に免許申請の拒否事由が列挙されていて

2  内閣総理大臣は、申請者が次の各号のいずれかに該当するとき、又は前条第一項の申請書若しくは同条第二項各号に掲げる添付書類のうちに虚偽の記載があり、若しくは重要な事実の記載が欠けているときは、免許を与えてはならない。

一  取締役会を置く株式会社でない者

二  資本金の額が委託者又は受益者の保護のため必要かつ適当なものとして政令で定める金額に満たない株式会社

三  純資産額が前号に規定する金額に満たない株式会社

四  他の信託会社が現に用いている商号と同一の商号又は他の信託会社と誤認されるおそれのある商号を用いようとする株式会社

五  第十条第一項の規定により第七条第三項の登録の更新を拒否され、第四十四条第一項の規定により第三条の免許を取り消され、第四十五条第一項の規定により第七条第一項の登録若しくは第五十二条第一項の登録を取り消され、第八十二条第一項の規定により第六十七条第一項の登録を取り消され、第八十九条の規定により第八十六条第三項の登録の更新を拒否され、第百二条第一項の規定により第八十六条第一項の登録を取り消され、担保付社債信託法 (明治三十八年法律第五十二号)第十二条 の規定により同法第五条第一項 の免許を取り消され、若しくは金融機関の信託業務の兼営等に関する法律(昭和十八年法律第四十三号)第八条ノ三の規定により同法第一条第一項 の認可を取り消され、又はこの法律、担保付社債信託法 若しくは金融機関の信託業務の兼営等に関する法律に相当する外国の法令の規定により当該外国において受けている同種類の免許、登録若しくは認可(当該免許、登録若しくは認可に類する許可その他の行政処分を含む。以下この号、第八号ニ及び第十号イにおいて同じ。)を取り消され、若しくは当該免許、登録若しくは認可の更新を拒否され、その取消しの日(更新の拒否の場合にあっては、当該更新の拒否の処分がなされた日。第八号ニ、ホ及びヘ並びに第十号イにおいて同じ。)から五年を経過しない株式会社

六  この法律、担保付社債信託法 、金融機関の信託業務の兼営等に関する法律投資信託及び投資法人に関する法律 (昭和二十六年法律第百九十八号)、商品投資に係る事業の規制に関する法律 (平成三年法律第六十六号)、資産の流動化に関する法律 (平成十年法律第百五号)若しくは著作権等管理事業法 (平成十二年法律第百三十一号)その他政令で定める法律又はこれらに相当する外国の法令の規定に違反し、罰金の刑(これに相当する外国の法令による刑を含む。)に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から五年を経過しない株式会社

七  他に営む業務がその信託業務に関連しない業務である株式会社又は当該他に営む業務を営むことがその信託業務を適正かつ確実に営むことにつき支障を及ぼすおそれがあると認められる株式会社

八  取締役若しくは執行役(相談役、顧問その他いかなる名称を有する者であるかを問わず、会社に対し取締役又は執行役と同等以上の支配力を有するものと認められる者を含む。以下この号、第四十四条第二項及び第四十五条第二項において同じ。)、会計参与又は監査役のうちに次のいずれかに該当する者のある株式会社

イ 成年被後見人若しくは被保佐人又は外国の法令上これらと同様に取り扱われている者

ロ 破産者で復権を得ないもの又は外国の法令上これと同様に取り扱われている者

ハ 禁錮以上の刑(これに相当する外国の法令による刑を含む。)に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から五年を経過しない者

ニ 第十条第一項の規定により第七条第三項の登録の更新を拒否され、第四十四条第一項の規定により第三条の免許を取り消され、第四十五条第一項の規定により第七条第一項の登録若しくは第五十二条第一項の登録を取り消され、第五十四条第六項の規定により同条第二項において準用する第七条第三項の登録の更新を拒否され、第五十九条第一項の規定により第五十三条第一項の免許を取り消され、第六十条第一項の規定により第五十四条第一項の登録を取り消され、第八十二条第一項の規定により第六十七条第一項の登録を取り消され、第八十九条の規定により第八十六条第三項の登録の更新を拒否され、若しくは第百二条第一項の規定により第八十六条第一項の登録を取り消された場合、担保付社債信託法第十二条 の規定により同法第五条第一項 の免許を取り消された場合、若しくは金融機関の信託業務の兼営等に関する法律第八条ノ三の規定により同法第一条第一項 の認可を取り消された場合又はこの法律、担保付社債信託法 若しくは金融機関の信託業務の兼営等に関する法律に相当する外国の法令の規定により当該外国において受けている同種類の免許、登録若しくは認可を取り消された場合、若しくは当該免許、登録若しくは認可の更新を拒否された場合において、その取消しの日前三十日以内にその法人の取締役若しくは執行役、会計参与若しくはこれらに準ずる者又は国内における代表者(第五十三条第二項に規定する国内における代表者をいう。)であった者でその取消しの日から五年を経過しない者

ホ 第八十二条第一項の規定により第六十七条第一項の登録を取り消され、第八十九条の規定により第八十六条第三項の登録の更新を拒否され、又は第百二条第一項の規定により第八十六条第一項の登録を取り消された場合において、その取消しの日から五年を経過しない者

ヘ この法律に相当する外国の法令の規定により当該外国において受けている第六十七条第一項若しくは第八十六条第一項と同種類の登録を取り消され、又は当該登録の更新を拒否された場合において、その取消しの日から五年を経過しない者

ト 第四十四条第二項若しくは第四十五条第二項の規定により解任を命ぜられた取締役若しくは執行役、会計参与若しくは監査役、第五十九条第二項若しくは第六十条第二項の規定により解任を命ぜられた国内における代表者若しくは支店に駐在する役員若しくは第八十二条第二項若しくは第百二条第二項の規定により解任を命ぜられた役員又はこの法律に相当する外国の法令の規定により解任を命ぜられた取締役若しくは執行役、会計参与若しくは監査役若しくはこれらに準ずる者でその処分を受けた日から五年を経過しない者

チ 第六号に規定する法律、会社法 (平成十七年法律第八十六号)若しくはこれらに相当する外国の法令の規定に違反し、又は刑法 (明治四十年法律第四十五号)第二百四条 、第二百六条、第二百八条、第二百八条の三、第二百二十二条若しくは第二百四十七条の罪、暴力行為等処罰に関する法律(大正十五年法律第六十号)の罪若しくは暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律 (平成三年法律第七十七号)第四十六条 、第四十七条、第四十九条若しくは第五十条の罪を犯し、罰金の刑(これに相当する外国の法令による刑を含む。)に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から五年を経過しない者

九  個人である主要株主(申請者が持株会社私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律 (昭和二十二年法律第五十四号)第九条第五項第一号 に規定する持株会社をいう。以下同じ。)の子会社であるときは、当該持株会社の主要株主を含む。次号において同じ。)のうちに次のいずれかに該当する者のある株式会社

イ 成年被後見人若しくは被保佐人又は外国の法令上これらと同様に取り扱われている者であって、その法定代理人が前号イからチまでのいずれかに該当するもの

ロ 前号ロからチまでのいずれかに該当する者

十  法人である主要株主のうちに次のいずれかに該当する者のある株式会社

イ 第十条第一項の規定により第七条第三項の登録の更新を拒否され、第四十四条第一項の規定により第三条の免許を取り消され、第四十五条第一項の規定により第七条第一項若しくは第五十二条第一項の登録を取り消され、第五十四条第六項の規定により同条第二項において準用する第七条第三項の登録の更新を拒否され、第五十九条第一項の規定により第五十三条第一項の免許を取り消され、第六十条第一項の規定により第五十四条第一項の登録を取り消され、第八十二条第一項の規定により第六十七条第一項の登録を取り消され、第八十九条の規定により第八十六条第三項の登録の更新を拒否され、第百二条第一項の規定により第八十六条第一項の登録を取り消され、担保付社債信託法第十二条 の規定により同法第五条第一項 の免許を取り消され、若しくは金融機関の信託業務の兼営等に関する法律第八条ノ三の規定により同法第一条第一項 の認可を取り消され、又はこの法律、担保付社債信託法 若しくは金融機関の信託業務の兼営等に関する法律に相当する外国の法令の規定により当該外国において受けている同種類の免許、登録若しくは認可を取り消され、その取消しの日から五年を経過しない者

ロ 第六号に規定する法律の規定又はこれらに相当する外国の法令の規定に違反し、罰金の刑(これに相当する外国の法令による刑を含む。)に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から五年を経過しない者

ハ 法人を代表する取締役若しくは執行役、会計参与若しくは監査役又はこれらに準ずる者のうちに第八号イからチまでのいずれかに該当する者のある者

なんて規制があります。今回のように,「グループ内で動かす」というケースがこの条文で十分にカバーできるかはアヤシイ部分はあるけれど,経営者レベルにとどまらず,少なくとも株主までちゃんと見ようよ,というところは当然の認識としてあったわけです。この辺は,以前調べて紹介を書いた,USの信託会社規制でも同じで,金融規制に関わる者にとっては,当たり前の共通認識だったと思います。

これに対して,介護保険法では,例えば指定居宅サービス事業者の指定拒否事由(70条2項)を見ると

2  都道府県知事は、前項の申請があった場合において、第一号から第三号まで、第五号から第七号まで、第九号又は第十号(病院等により行われる居宅療養管理指導又は病院若しくは診療所により行われる訪問看護、訪問リハビリテーション、通所リハビリテーション若しくは短期入所療養介護に係る指定の申請にあっては、第二号から第十一号まで)のいずれかに該当するときは、第四十一条第一項本文の指定をしてはならない。

一  申請者が法人でないとき。

二  当該申請に係る事業所の従業者の知識及び技能並びに人員が、第七十四条第一項の厚生労働省令で定める基準及び同項の厚生労働省令で定める員数を満たしていないとき。

三  申請者が、第七十四条第二項に規定する指定居宅サービスの事業の設備及び運営に関する基準に従って適正な居宅サービス事業の運営をすることができないと認められるとき。

四  申請者が、禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなるまでの者であるとき。

五  申請者が、この法律その他国民の保健医療若しくは福祉に関する法律で政令で定めるものの規定により罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなるまでの者であるとき。

六  申請者が、第七十七条第一項又は第百十五条の二十九第六項の規定により指定を取り消され、その取消しの日から起算して五年を経過しない者(当該指定を取り消された者が法人である場合においては、当該取消しの処分に係る行政手続法第十五条の規定による通知があった日前六十日以内に当該法人の役員(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者をいい、相談役、顧問その他いかなる名称を有する者であるかを問わず、法人に対し業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者と同等以上の支配力を有するものと認められる者を含む。第五節において同じ。)又はその事業所を管理する者その他の政令で定める使用人(以下「役員等」という。)であった者で当該取消しの日から起算して五年を経過しないものを含み、当該指定を取り消された者が法人でない病院等である場合においては、当該通知があった日前六十日以内に当該病院等の管理者であった者で当該取消しの日から起算して五年を経過しないものを含む。)であるとき。

七  申請者が、第七十七条第一項又は第百十五条の二十九第六項の規定による指定の取消しの処分に係る行政手続法第十五条 の規定による通知があった日から当該処分をする日又は処分をしないことを決定する日までの間に第七十五条 の規定による事業の廃止の届出をした者(当該事業の廃止について相当の理由がある者を除く。)で、当該届出の日から起算して五年を経過しないものであるとき。

八  前号に規定する期間内に第七十五条の規定による事業の廃止の届出があった場合において、申請者が、同号の通知の日前六十日以内に当該届出に係る法人(当該事業の廃止について相当の理由がある法人を除く。)の役員等又は当該届出に係る法人でない病院等(当該事業の廃止について相当の理由があるものを除く。)の管理者であった者で、当該届出の日から起算して五年を経過しないものであるとき。

九  申請者が、指定の申請前五年以内に居宅サービス等に関し不正又は著しく不当な行為をした者であるとき。

十  申請者が、法人で、その役員等のうちに第四号から前号までのいずれかに該当する者のあるものであるとき。

十一  申請者が、法人でない病院等で、その管理者が第四号から第九号までのいずれかに該当する者であるとき。

となっていて,経営者レベルまでしか見ず,株主レベルまで見ることをしてません。免許・指定申請の手続内で法人格否認をやるなんてアクロバティックなことは難しいでしょう,多分。

するってーと,金融規制では当たり前になっているスキームをあえて採用しなかったということは,「介護保険の世界では,現場の職員と経営者までまともであれば,株主が誰であろうと知ったこっちゃない」という規制枠組みを採用してきた――その政策的な当否がどうなのかは知らないけれど――というわけで,何を今更どたばたしているんだか,という気がします。