サブプライム本を3冊読んでみました:
①みずほ総合研究所 『サブプライム金融危機―21世紀型経済ショックの深層』②江川由紀雄『サブプライム問題の教訓』
③大澤和人『サブプライムの実相』
それぞれずいぶんとタイプの違った本だなぁ。
①は,分析に深みがなく,この3冊の中では「格下」。面白いのは,②と③の対比。
③は,どちらかというと,新聞記事とか週刊誌記事タイプの分析の仕方で,そういう「義憤に駆られる」ノリの好きな人は,感情移入しながら読めて楽しそう。U村せんせ的なノリと言ってもよいかも。誤字がちと目に付くけれど,そこはまぁ,急いで出版したと推測されるから仕方ないでしょう(あんまりそこを指摘すると自爆しそうorz)。もうひとつ,②と対比したときの特徴は,非常に(伝統的な)法律家的な視点からの分析が,法律家の目に付きやすいところ(=住宅ローン市場)に対してなされていることで,その視点が,週刊誌的分析手法とよくつながっている。
これに対して,②は,法律家というよりはファイナンスの人が,ファイナンス的に目に付きやすいところ(=流通市場)について書いた,という色が強い。義憤に押し流されることはなく,冷静。リスクの説明のところが,bayesian的でなくてfrequentist的なものになっているところは?と思ってしまうところもあるけれど(bayesianチックに発想するなら,point estimate+errorというアプローチじゃなくて,MCMCなんかを使ったWHOLE posterior distributionの推定だよねぇ),ある程度,統計と金融商品のリスク計算の仕方を知っている人にとっては,なかなかわかりやすい。
どっちの要素もそれなりにあるんだろうけれど,ここまで方向性の違う分析が出るとは。ちなみに,法律家でない(ぇ)ヘタレな僕は,義憤にまぎれて冷静で客観的な分析ができなくなってしまうのが怖いので,②に一票。
PS. こんなのもあります。