今年最終回(年明けにまだやるけど)の会社法の講義を終えての感想:
帰国以後,自転車操業で会社法の講義ノート(正確に言うとpowerpoint)を作っていて,ようやっと国際会社法の前まで来たので(<-あとすこーし!),新しい会社法の全体像が何となく分かってきたんですが。一番の感想が,「分かりにくい」。
記憶が確かならば,確か,会社法が改正されるときに,「商法は文語だったり枝番だったりして分かりにくいけれど,会社法はみんなが使うものだから,一般国民にもわかりやすいように作る」とか言われていたような気がするけれど,これは全くの逆ぢゃないか。
どこがそうかというと,会社法の条文の中であっち行ったりこっち行ったりする定義規定のネスト構造が,もうほとんど悪夢の感に近い。規定の解釈の余地を少なくするように厳密に定義しようということとかひとつのせいどにまとめようとかいうことからこういう形になったのかと想像されるけれど,会社法の様々な規定が頭に入っている人でないと読みこなせないです。逆に,そういう人の立場からすると,前よりは規定内容が明確になっているので「分かりやすい」。旧商法は,専門家じゃなくても,一部を読めばだいたい分かったのに,会社法は,全体を理解してないで読むと,とんでもない誤解をする可能性がある。
つまり,旧商法と会社法とを比較すると:
旧商法→専門家にとって分かりにくく,一般国民(シロウト)にとって分かりやすい
会社法→専門家にとって分かりやすく,一般国民(シロウト)にとって分かりにくい
ってことぢゃないかと。
言っていることとやっていることが正反対だねぇ。あ,別に,やっていることが悪いと言っているわけではない(専門家にとって明確なルールを提供することは,それはそれで望ましい)んだけれど,言っていることがウソっぽい,と。